信州大学医学部歯科口腔外科レジデント勉強会

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Department of Dentistry and Oral Surgery, Shinshu University School of Medicine


顎関節のMRI診査

                            1999.6.9 鎌田            

@MRIとは

 MRI(Magnetic Resonace Imaging ) とは核磁気共鳴(NMR) 現象を使用した画像作製法のことで正式には磁気共鳴画像撮影法といいます。

ANMR・MRIの原理

 NMR現象を起こす生体構成原子は水素・フッ素・炭素・ナトリウム・リンの5種類ですが、臨床上MRIの対象となるのは水素原子のみです。水素原子は一つの核と一つの電子から構成されています。核にはプラスの電荷をもった小さな粒子「陽子(プロトン)」が存在し、核はある軸を中心に地球が自転しているかのように回転しています。このことを「プロトンがスピンしている」といいます。電荷が動く(プロトンが回転する)とそこには磁場が生じ、その結果一つのプロトンは一つの棒磁石のようになると考えられます。一般の生体内ではこの棒磁石はそれぞれバラバラの方向を向いており、全体としてN極やS極は存在しませんが、生体を大きな磁石のなかに入れると、N極とS極ができます。ただしプロトンの回転軸は、コマが倒れる直前にみせるような「みそすり運動」をしています。この「みそすり運動」のことを「歳差運動」とよびます。生体の全てのプロトンはそれぞれ別の歳差運動をしていますが、全部を合計して人間を「一つの大きな磁化ベクトル」と考えることができます。この状態で、歳差運動と同じ周波数をもったラジオ波(電磁波のひとつで、RFパルスといいます)を与えてやると、磁化ベクトル(プロトンの集まり)は共鳴しそのエネルギーを受け取ります。これは普段より多くのエネルギーをもった(励起された)状態で、このままでは不安定です。ここでラジオ波を与えるのを止ると、磁化ベクトルは蓄えていたエネルギーを二つの方法で減らしていき、もとの安定な状態に戻ります。このもとに戻ることを「緩和」といいます。この「緩和」していく過程はそれぞれ組織ごとによって異なり、この緩和時間の組織による違いなどを画像上で白黒に表わすことになります。

BMR撮影像と他の方法との比較

 MRは、周囲組織と関節を構成する軟組織および硬組織との両方を一つの画像として表わす。電離放射線被爆がなく、有害な生物学的影響も認められていないし、いったん標準的なプロトコールが開発されれば、この検査は比較的術者の自由度が大きい。MR画像は、種々の断層面を得ることができ、これは顎関節円板の内方及外方の検出において、重要な長所である。これらの長所に基ずいて、MR撮影は多くの臨床の場で顎関節の軟組織画像法の第一選択と判断されるべきである。

C画像の種類

^水素原子密度強調画像

 水素原子密度のみを強調し、組織の持っているT1緩和時間やT2緩和時間の因子をできるだけ排除するように、繰り返し時間(TR)を長く、エコー時間(TE)を短くしたものです。水素原子の密度に比例し信号が強くなるので、画像では水や脂肪が白くなります。

_T1強調画像(T1weighted image)

 組織の持っているT2緩和時間の影響をなるべくなくし、T1緩和時間を強調するようにTRとTEを短くしたものです。画像上では、脂肪が白くなり水が黒くなります。

`T2強調画像(T2weighted image)

 T1強調画像とは逆に、そしきのもっているT1緩和時間の影響をなるべく無くし、T2緩和時間を強調するようにTRとTEを長くしたものです。TEが長いため信号強度が弱くSN比(信号/ノイズ比)も悪く粗造な画像になります。画像上では、水が白くなり筋肉などが黒くなります。

D禁忌

絶対的禁忌

脳動脈瘤のクリップ
心臓のペースメーカー

相対的禁忌

閉所恐怖症あるいは非協力的患者
妊娠中の患者
金属製心臓弁を有する患者
危険な部位の強磁性体異物
疼痛制御のために埋入された刺激針
6週間以内の血管クリップ

禁忌でないもの

矯正装置、歯科材料
術後6週間以上たった脳外用クリップ
金属補綴物

 

顎関節症のMRI診断

 ロ円板の変形(患側、健側)

^変形なし biconcave (C-type)
_平坦化 biplaner(P-type)
`後方肥後部の肥大 enlargement of posterior band (E-type)
a前方肥後部の肥大 reversed (R-type)
b屈曲 elbow shaped (El-type)
c塊状 biconvex (V-type)

 ワ Joint effusion

 ン下顎頭皮質骨の変化(患側、健側)

 ゙下顎頭骨髄の変化(患側、健側)

 煌ヨ節円板動態の異常

 

 参考文献

TMDと口腔顔面痛の臨床管理  クインテッセンス出版株式会社

やさしい口腔検査診断学  永末書店

口腔画像診断の臨床  医歯薬出版株式会社

臨床画像5 MRIによる関節の解剖と診断  MEDICAL VIEV


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